Tabit たびっと倶楽部の旅ふれあいマガジン
29号H16.6.1発刊
Tabit29号  
地球の旅日人
西湖今昔物語
Travel Information
Tabit特選 地球を感じる旅
何処までも透きとおるブルーへブン

世界をめぐる乗り物の旅
第7回ハービス旅大賞発表
旅行フォト部門優秀賞
紀行エッセイ部門優秀賞
旅にまつわるちょっといいモノがたり4〜ハービスPLAZA 店舗紹介
ハービスたびっと倶楽部会員優待加盟店・特典のご案内
ハービスPLAZA NEWS 大人の街を楽しみつくす
第8回ハービス旅大賞 「紀行エッセイ部門」「旅行フォト部門」作品大募集!!
ハービスPLAZA INFORMATION

旅の事件簿
 
中嶋芳子
文・イラスト 中嶋芳子
画家。メキシコに留学。マーガレットの花をモチーフにした作品を日本とスペインで発表。スペイン語圏を中心とした旅の企画に携わっている。日本スペイン語センター講師。日本旅行作家協会会員。
 
ピカソと同じマラガ出身の陽気なハビエルは、私たちのドライバー兼ボディガードである。スペインへ来て3日目の朝。ユーラシア大陸最南端、そして大西洋と地中海を一望できる港町タリファから、対岸のアフリカ大陸を目指し、私たちを乗せたフェリーは出港した。丘の上には、おびただしい数の白い風力発電機が、ジブラルタル海峡を渡る強い風を受け、巨大な風ぐるまのように廻っている。
ハビエルがデッキにもたれながら「僕にとって今日が、33歳にして初めての外国行きなのだ」と嬉しそうに打ち明けた。
モロッコを観光し、陸路でスペイン領セウタに入り、パラドール(国営ホテル)に1泊する予定。モロッコの港町タンジールでは、ガイド氏の案内で古いカスバ(要塞)、迷路のような小路やスーク(市場)を訪れ、イスラム世界を垣間見た。土産物店では、ハビエルだけが、買い物をしていた。
ガイド氏と別れると、運転しているハビエルが「モロッコ人にはビックリしたョ。あんなに拝金主義だとは思わなかった。僕たちとは大違いだね」と真剣な表情で、つぶやいた。途中何度か道に迷いながらも、日没前に国境へたどり着いた。セウタに一歩入った途端「ビバ!エスパニャ。我祖国に帰ってきた」と両手を大きく広げて、ハビエルが叫んだ。わずか半日でも、外国人を連れての初めての異国。かなり、気を張っていたのだろう。翌朝は風が強く白波の立つ天気となり、一等船室でも椅子からころげ落ちそう。大揺れの中、小一時間でスペインに帰り着いた。
下船準備をしていると、ハビエルが真青な顔をして「僕は気分が悪くて、ずっとトイレで過ごしていたんだ。 生まれて初めての船酔いだけれど、大丈夫。ちゃんとマラガまで運転できるから」とプロらしく言うのである。

イラスト
その言葉通り、私たちをホテルまで送り届けてから、奥さんと子供の元へと帰って行った。きっと折に触れ、彼は初めてづくしの外国行きを、思い出しているに違いない。