Tabit たびっと倶楽部の旅ふれあいマガジン
32号H17.3.1発刊
Tabit32  
地球の旅人
韓国モラン市場の青空カルチャー
旅の事件簿 失敗談・体験談
ナポリを見て死ね
“世界の旅”市場から
第8回ハービス旅大賞受賞作品
紀行エッセイ部門 最優秀賞 対人恐怖症の犬とアメリカ人
第8回ハービス旅大賞決定
感動に出会える海外スポーツ観戦の旅!
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韓国モラン市場の青空カルチャー
 露店ひしめくモラン市場(シジャン)は、とにかく何でも売っている。食べながら飲みながら、ひやかしながらそぞろ歩けば、韓国カルチャーが、いやでも全身に沁みてくる。モランとは北朝鮮の山、モラン峰(ボン)のこと。朝鮮戦争で平壌の母親と離別した軍人が、故郷を偲んで命名したのだという。
 
岸 宗生 (きし むねお)
岸 宗生 (きし むねお)
日本シナリオ作家協会・日本旅行作家協会会員。横浜在住。
脚本執筆の傍ら、TV旅番組の構成を担当。作品には「ふれあい自然列島」(TBS)、「素晴らしき地球の旅」「地球に好奇心」(NHK BS)等がある。

モラン市場
モラン市場は、この地を開墾した貧しい退役軍人たちが、
1962年に生活のため農作物の市を立てたことから始まった
法より生活!韓国市場パワー
 店先に吊るされたキジ肉が湯気を立てていた。茹で立てだからではない。皮を剥かれたばかりのキジの体温が、寒気に触れて湯気になっているのである。生きてるキジを見事な手捌きで処理しているのは若い茶髪のオネエサン。カメラを向けるとVサインした。
 ソウルの南東、京畿道城南市に立つ「モラン市場」は、毎月4と9の付く五日ごとに開かれる青空定期市場である。ソウル市街地からは、地下鉄8号線に乗り換えて終点モラン駅下車、ソウル市庁駅からだと62分。車の場合は市庁から25.3キロ、約30分だが混み具合で大きく変わる。ソウルの友人、朴鐘興君の案内で、1月下旬のモラン市場を訪ねた。
 長さ350m、面積3300坪の駐車場に、あらゆる品揃えの露店がひしめき合っている。朴君によると、露店の正式登録者は951人だが、場所の事実上の占有権を持っている人を含めると約1000人。加えて権利なしに店を出している人もいて1500店ぐらいになっているが、当局からは黙認されているという。
 権利関係に寛大なのは韓国の特性のようだ。思えば南大門市場も、道路のド真ん中が露店に堂々と占拠されている。「確かに違法だけど、韓国は“生活権”が優先するから黙認なんです」と朴君。そういえば水原華城の市場では、交差点の信号機が車道まで増殖した店に取り囲まれ、そのトタン屋根をブチ抜く形で立っていた! 韓国生活権パワー、畏るべしである。

飲食屋台
迷路のようにビッシリ並ぶ飲食屋台には、調理設備の大掛かりな店も多い

孵化蒸し鶏卵を頬ばり
マッコリをガブ飲み


 モラン市場の看板の一つは、品目を13に区分した売り場だそうだ。花、雑穀、薬草、衣類、雑貨、海産物、野菜、唐辛子、靴、金属類、飲食、愛犬、特殊犬、その他。その他を入れると14だがと朴君に問うと、「韓国人は細かい事は気にしません」とのこと。
 会場で目を引くのは、ズラリと並んだ檻である。犬、猫、ウサギ、キジ、ニワトリ、山羊、ヘビ、アヒルが、それぞれ分かれて入っている。全部食用。猫とヘビは漢方薬として用いられる。
食用犬の目はどれもトロンとしていて静かに蹲っている。客の選んだ犬が店の人に引かれて奥の方へ。カメラを向けたら追っ払われた。 ちなみに子供が群れているペット用の小犬売り場は、食用犬の檻の斜め向い側であった。
 獣肉店の並びに、蒸した孵化寸前の鶏卵を食べさせるテントがある。精力増強に効くらしい。孵化蒸し卵は4個から売っている。1個だけ買いたいというと店のおばさんがタダでくれた。お金を出しても笑って受け取らない。カムサハムニダ、早速いただく。蒸し卵は黄色と白が混ざったマーブル状。ヒナの毛や小骨はペッと吐き出す。濃厚な味である。
 
キジ
写真のキジは、心臓をくり貫かれた直後のもの。
目の前での動物の処理は凄絶だが、生命の連鎖に
粛然たる気持ちになる

マッコリ
マッコリを甕から汲み上げ、茶碗でガブガブやる

 
 飲食店は一画に集められている。水槽を生簀に活魚の刺身を出している店もある。しっかり目の合ってしまったおばさんに呼び込まれて店の床几に座る。マッコリを頼むと四合程も入る甕で出てきた。突き出しには海苔と卵のスープ。エイの蒸し物を注文したが、それにしてもデカイ。気合を入れていただく。アンモニア臭がきついがマッコリに合う。サービスのモツ炒めとセンマイ炒めも美味。シメて会計は……マッコリが回っていて失念したが、横浜の屋台で飲む3分の1以下であったことは間違いない。

歌って踊る飴売り一座

 傍らの広場からバカに調子のいい曲に乗った太鼓や歌が聞こえてきた。行ってみると、
女乞食やピエロ姿の男たち数名が、この寒空にピラピラの衣装で大太鼓や小太鼓を打ち鳴らし、歌って踊っている。朴君に訊くと飴売りの一座だという。乞食芝居で笑わせて、歌って踊って飴を売る。飴1パック2000ウォン(200円チョット)。一座の歌のテープやビデオも売るようになったのは最近のことらしい。飴は板状をかち割ったもので、気泡があって軟らかく、素朴な甘さが口に染みる妙に切なく懐かしい味だった。
 青空市場のモラン市場は、日没とともに店じまいである。客もまばらとなった場内に底冷えの風が吹き渡る中、乞食衣装の男たちが淡々と太鼓を片付けている。その姿を見つめながら、私は飴売りの一座に、旅の出会いの一期一会を感謝した。
 夕暮れのテントの飲み屋街に明かりが灯り始めた。どうやら片付けを終えた売り手たちで、市場はもうひと賑わいみせるようである。
歌って踊る飴売り一座
乗りのイイ曲は“オヨネーズの「麦畑」”をハイテンポにした感じ。繰り返されるリズムと旋律が身体にすり込まれる
夕暮れ
夕暮れ。近くを流れる大源川の川風が肌を刺す

・・・・・・ ●Travel Information 韓国のめぐり方
 
【正式国名】大韓民国
【首都】ソウル
【面積】約9万9373
【人口】約4882万人(2003年)
【公用語】韓国語(ハングル文字)
【通貨】通貨単位はウォン(Won)。紙幣は1万、5000、1000の3種類で、硬貨は6種類。10ウォン=約1円(2005年2月現在)
【ビザ】30日以内の観光であればビザは不要。パスポートの有効期限が、滞在日数+15日以上必要になる。万一に備えコピーも用意していこう。
【気候】冷温帯気候に属し、夏は高温多湿、冬は低温乾燥。日本の北部とほぼ同じと考えていい。四季の変化がはっきりしていて、短いながら梅雨もある。
【時差】日本との時差はない。日没時間は日本より遅い。
ソウル・汝矣島の夕景
ソウル・汝矣島の夕景
(写真提供:韓国観光公社)
 
【交通アクセス】
・韓国へのアクセス
ソウルの仁川国際空港へは東京、大阪、名古屋ほか、全国20都市から直行便が発着。航空会社も主に大韓航空、日本航空、全日空、アシアナ航空、ユナイテッド航空、ノースウエスト航空などが運行していて、フライト数も多い。東京→ソウルの所要時間は約2時間20分。2001年3月にオープンした仁川国際空港が金浦空港に代わってソウルの空の玄関口となった。船の場合、現在は下関港-釜山港へのフェリー、博多港-釜山港、小倉港-釜山港などが就航している。
・国内の移動
韓国国内はバスが値段も安くて、便利。大体大都市にはどこにも中長距離用バスターミナルがあり、そこから中・小都市を結ぶ路線も多数出ている。また、長距離の移動には2004年に一部開通したKTX(韓国高速鉄道)も利用可能。週末や祝祭日には混むため切符を事前に買う方が良い。
【宿泊・物価情報】
さまざまな宿泊施設があるため、贅沢な旅を楽しみたい人も、貧乏旅行の人も満足できる。ただしソウルやプサンなどの広域市や大都市を離れると中級ホテル、旅館しかなくなる。
ホテルに宿泊する場合は地方都市でも1泊40000〜70000ウォン、有名店の食事は1食30000〜50000ウォンの予算を見ておきたい。安くあげたいなら1泊10000〜15000ウォンほどの旅人宿、旅館に泊まり、町中にある食堂で1食4000〜12000ウォンぐらいの予算。食事は屋台、買い物は市場でと決めておくとかなり節約ができる。
平昌の蕎麦の花畑(写真提供:韓国観光公社)
平昌の蕎麦の花畑
(写真提供:韓国観光公社)