|
|
|
| |
 |
| 文・イラスト 古川タク |
1941年三重県生まれ。フリーのイラストレーター、アニメーション作家として多くの作品を手がける。アヌシー国際アニメーション映画祭審査員特別賞、文藝春秋漫画賞他、受賞。
|
|
|
|
完璧なツアーコンダクターだった。女房とフランクフルトに住む可愛いドゥ・マーゴ(註、駄ジャレ、二人の孫の意)をたずね、息子に車でミュンヘンまで案内させ、ローマもナボナ広場近くのいいホテルをとり、日帰りツアーのナポリ、ポンペイに参加する。すべて予定通りネットを駆使してのツアコンぶりにわれながら内心、ボクってこんな潜在能力があったんだとにんまりしていた。あの瞬間までは。思いだしても悪夢がよみがえる。
ボクも女房も日頃、写真というものに執着がない。女房などは学生時代に写真部だったにもかかわらず、旅行先でも滅多に撮らない。アルバムにきちんと貼られた写真なんて気持ち悪いとまでのたまう。しかし今回は特別だった。息子の仕事の関係でドイツにいて滅多に会えない孫の写真だけはしっかり娘に借りたデジカメで撮っていた。このデジがみそだ。忘れもしないナポリに向うバスの中。解像度の設定?かなんかがうまくいってなくて、突然次が撮れなくなってしまった。はばかりながらコチトラMac歴20年、年はとってもデジにはそこそこ強い?どれどれとばかりカチャカチャやっているうちに「フォーマットする」を押してしまったらしい。あわれ、可愛いドゥ・マーゴポートレート全50枚は一瞬のうちに姿を消したのである。アンドゥ機能はないものかと焦ることしばし、隣りからは「だから、言ったでしょ、機械に弱いんだから、もう!」叱責、罵詈雑言、茶わんでも飛んできそうな勢い、おっとここはバスの中、外は真っ青なナポリの海と空、前の母娘二人連れも事の次第に気づいた様子。帰国後もデータ修復しますの会社を回ったが全部駄目。いやはや急転直下とはこのこと、旅は悪夢の後半戦になってしまった。
|
 |
|
|
| |
|